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陸上競技クラブチーム"SNE Athletes"の公式ブログ

#9 決戦を終えた君へ

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強い日差しが照らす中、高校生最強を決める決戦が始まった / photo by 石田優希(@rinrin_118421)
 
酷暑の中、レース,試技、お疲れさまでした。
 
 
望んだ結果を手にした君も、悔し涙を流した君も、全ての高校陸上選手が羨むインターハイの舞台に立てたことこそが輝かしい。誇りに思ってください。
 
君達はおそらく、高校生活の大部分を陸上に費やしてきて、普通の人達が味わうことの無いような強烈な重圧に耐えながらも、一方でそれを楽しみながら三重のトラックを踏んだはずです。特に自分の人生に大きな影響を及ぼす高校時代にそんな素晴らしい経験をすることができた君達は、これから違う分野の違う舞台に挑戦しても、同じように乗り越えていけます。これから直面する学問や資格試験、就職しても、起業したっていい。そのガッツで、挑戦していく準備はできています。
 
 
 
しかし、これからも陸上を続ける君は、一度立ち止まって考えないといけません。
 
 
まず何のために陸上をやるか。
勝つため?楽しむため?
 
勝つためなら、なぜ勝ちたいの?箱根駅伝に出たい?自分の可能性を追及したい?勝てなくて悔しかったから?それとも、周りに励まされて仕方なく?
 
 
ここが有耶無耶だと、非常に苦しいです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
僕は、自分なりに明確な意思を持って大学でも競歩を続ける決断をしました。そのときはただ単純に自分の可能性を追求したかったのと、勝てない理由を他人に転化しない環境で競技をやりたかったから。そして、あえて競歩専門の指導者がいないかつスポーツ科学を好きなだけ学べる法政大学に進みました。
 
文字に起こすと見栄えが良いですが、これはある意味相反する行為です。勝ちたいなら勝つ人と生活するのが1番だし、実際のところ、強豪高校出身の有名選手と同じチームでいることで、自分の自尊心を傷つけたくなかったのがあの時の本心だったんだろうと思います。本当の力の差を見せつけられたくなかった。
 
 
自分の可能性を追求するのと指導者のいない環境に飛び込むのは相反する行為です。それを薄々理解しながら僕は大学で2年間競技を続けました。結局思うように結果が出なくて苦しくなって、何度も辞めようと思いました。
 
 
でもやっぱり根底には陸上が好きだという気持ちがあって、競歩の楽しさに惹かれていて、辞めることができませんでした。競歩で知り合ったコミュニティは本当に素晴らしいし、学べることばかり。僕が競歩をやっていなかったら、箱根駅伝のチームで生活する日々とか、日本全国に知り合いが出来るなんてことは無かったかもしれない。競歩で強くなるための探求に向かってや,スポーツ界全体を考えるために、勉強や研究活動にのめり込むことになることなんてあり得なかった。
 
 
もちろん競技スポーツで勝つこと,強くなることを第一に考えて環境を選ぶことは非常に大切です。ただ、君達のように広い可能性を持った人達にはそれだけじゃなくて、もっと先のこととか、競技スポーツの勝つこと以外の側面とか、そういうことを視野に入れて、自分を見つめ直してみて欲しい。
 
 
僕の周りには、競技以外に目標があって、それでも競歩で勝てるように試行錯誤してる人達が何人もいます。生徒たちの将来を真剣に考えながら暗闇のアンツーカートラックで黙々と練習してる高校教師, 看護師を目指して忙しい実習の合間を縫って歩き続ける医療人の卵, フルタイムの仕事をしながら日本代表を目指すたくさんの社会人ウォーカー。
 
 
もちろん、大学に所属して競技に熱中することは本当に素晴らしいことです。でもそれ以外の道も沢山あるんだってことに気づいて欲しい。
 
 
 
 
決戦を終えた君へ
 
いつまでもスポーツの価値を高める"人"であれ。

 

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この青いキャンバスにどんな未来を描けるだろうか / photo by 石田優希 @ririn118421