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陸上競技クラブチーム"SNE Athletes"の公式ブログ

#12 第57回全日本50km競歩高畠大会 出場選手紹介

2018年10月28日 午前8時00分 山形県高畠町
 
50kmに及ぶ熾烈な闘いの第1歩を、この国の鉄人達が歩み始める時間だ。
 
 
 
競歩選手達の中でも50km競歩は特別な種目である。どんなに経験を積んだベテランでもレース中に何があるか分からず、自分の置かれた状態を常に把握しながら歩まなければならない。
 
自身のペース配分を始めフォーム,体水分量,カロリー摂取状況,体温,精神状況などを常に把握しながらライバル選手のみならず天候・気温を意識して約4~5時間、集中し続ける必要がある。
 
 
筆者は"競歩は愉しいものだ”と公言するが、50km競歩で上位を目指していくのは本当に厳しい。しかし、この種目に義務感ではなく、自ら進んで挑戦しようとする選手がSNE Athletesには2人もいる。
 
今回、50km競歩に出場する神奈川県出身の選手はこの2人のみだ。しかも両名とも、競歩の名門校として名を馳せるあの「横浜高校」出身の選手である。彼等の活躍が今後、神奈川県で競歩に取り組む学生達に勇気を与えることを切に願う。
 
 
 
1500mも, マラソンも,50km競歩もやる。誰もやったことのない3刀流です。
 
そう語るのは1500mで4分05秒という、それだけでもハイレベルと言える自己ベストを持つ、大西和哉その人だ。 
 

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大西和哉 港南中-横浜高-横浜市陸協-SNE Athletes 港南中時代に陸上を始め、横浜高校時代は駅伝選手として活躍。大学に入り競歩にも取り組み始める。9月よりSNE Athletesに参画。自己ベスト:フルマラソン2:49'04 50km競歩4:41'42




 

 
 自己ベストは高校のときのものだが、 大学に入ってからも4分07秒で走破した実績がある。大学の駅伝部に所属することなく、長らく市民ランナーとして活躍していた。
 
 競歩は大学に入ってから始めた。5000m競歩のレースに数回出場し、競歩の魅力に誘われた。2016年の全日本競歩高畠大会では10000m競歩,20km競歩を未経験ながら50km競歩に挑戦し、4:41’42という記録で完歩した。
 
その後は競歩から離れたが、その年の12月に行われた第6回伊豆大島ラソンで初フルマラソンに挑戦し、2:49’04で優勝。見事にサブ3を達成するなど、並々ならぬパワフルさで様々な挑戦をしてきた。
 
「2016年のレースでは、"50km競歩”という種目を知ることができました。厳しさも、愉しさも。」
 
 
今大会では4時間35分切りが目標だと大西は語る。
 
「思うことは、ひたすらに”やらかしたい”。どういう事かというと、楽しさを爆発させて気づいたら驚く結果も出てたっていうイメージ。」
 
 
1500mもフルマラソンも50km競歩も、愉しいから取り組むのだというスタンスの大西。
この大会のためにSNE Athletesに参画することになった。競歩の愉しさを追求する彼は、予てからSNEのユニフォームに袖を通す運命だったのかもしれない。
 

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大きな腕振りとしなやかな股関節の動きが特徴的な大西。50kmの旅路をどのように調理するのか。 写真提供 どすこい様(@dsdsdskoi300)
 
 
 
 
進路も決まったんで、もう迷うことはない。やってやりますよ。
 

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佐々木和明 茅ヶ崎中-横浜高-早大同好会-SNE Athletes 横浜高校時代に同校の先輩である松永大介選手(富士通)に憧れ、競歩を始める。大学に入ってからも着々と実力を付け始め、陸歩クラブの練習会を纒める理事を歴任。SNE Athletesの創設メンバーとして参画した。自己ベスト 20km競歩:1:30'53
 
佐々木は名門、早稲田大学の4年生だ。来年からの就職先も決まり、春シーズンと比べて精神的にも余裕が出てきた。
 
トラックシーズンはここ一番という関東陸上競技選手権大会5000m競歩で後輩にラストスパートで競り負け、4位でゴールするなど、不完全燃焼のイメージがあった。そのイメージを払拭すべく、夏明けの練習からは常に良いイメージで練習を継続することを心掛けてきた。
 
「自分の体調に合わせて、距離をあえて踏み過ぎないように気をつけてきました。あくまで本番で50kmをきちんと歩き切れればいいので、練習で満足することだけはないように、自分の内面と向き合っています。」
 
佐々木は50kmに向けて慎重だ。それは2017年の日本選手権50km競歩輪島大会において、オーバーペースで突っ込んで30km地点で途中棄権した経験があるから。当時のことをこう語った。
 
「あの時、周りには"何で棄権したんだ”とか、”まだいけそうだったのに”とか、指摘を頂きました。確かに動きに余裕があったのは事実ですが、オーバーペースで歩いていたのを自分で気にしていて、ペースが落ち始めた25km地点から、あと25km何とか歩いてゴールするビジョンが自分には見えなかった。練習が出来ていただけに、50km競歩に対する驕りがあの時はありました。」
 
 
1年半の間、佐々木は次の50kmに挑戦するためのイメージを膨らませてきた。クレバーにレースを進めること、佐々木がやるべきことはそれだけだ。
 
 
 
 
 
 
 
そしてもう1人。
同日開催の女子10kmの部にSNE Athletesの副代表、根本侑実が出場する。
 
 
 
「"楽しそうだね” と言ってもらえるように、できるだけ速く,生き生きと歩きます」
 

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根本侑実 佐原高校-東京学芸大学-横浜市陸協-SNE Athletes 学生時代に全日本インカレ,日本選手権など一線で活躍。大学卒業後は競歩を引退したが、今年の元旦競歩大会から復帰し、4月からSNE Athletes創設メンバーとして参画。競歩を愉しむことをモットーにし、強いメッセージ性を秘めるチームの副代表。
 
言わずもがな、ここではお馴染みの根本だ。
フルタイムワーカーゆえ、休みを取るために上司に頭を下げたに違いない。
 
目標は入賞。それ以外は語らなかった。レース直前に多くを語るのは苦手だと言う。
 
今年に入って現役復帰し着々と実力を高めてきた根本は、今大会で復帰後初めて、順位を目標として口にした。今回は順位の方が、タイムよりもワクワクするのだと彼女は語る。
 
 
紅紫色のユニフォームを纏う彼女の姿は、誰よりも目立つはずだ。彼女の競歩に対する愛を、観戦者には現地でぜひ堪能して欲しい。
 
 

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練習後でも疲れた表情を見せず、満足そうに振る舞う根本。レース後に玉こんにゃくを食べながら、充実した表情を浮かべることだろう。
 
 
日本を代表するトップ選手も数多く出場する今大会。
観戦する方々には上位陣はもちろんのこと、全ての選手に声援を向けて欲しい。